この記事を読んだらわかること
- 小児の糖尿病の病態について
- 妊娠糖尿病の病態について
- 高齢者の糖尿病の病態について
がわかります
更新が途絶えてしまい、すみませんでした。
途絶えていた期間は、糖尿病の病態や合併症をまとめていましたので、今後の更新に少しでいいのでご期待ください・・・笑
今回は糖尿病の特殊な病態について書き出していきます。
ものぐさ看護師は、成人・高齢者の看護の経験しかないため、小児や妊婦さんの病態は簡潔にまとめていきます。
小児の糖尿病
小児の糖尿病は、成人と同様にⅠ型・Ⅱ型が主です。
症状も成人とほぼ変わりません。
小児の糖尿病における特徴
<Ⅰ型糖尿病>
- 小児の糖尿病全体の20-40%を占める
- やせ型が多い
- 若年者(25歳以下)が多い
- ウイルス感染などにより免疫の異常が生じる
- 急激に発症する
- インスリン注射が不可欠
<Ⅱ型糖尿病> - 小児の糖尿病の全体の60-80%を占める
- 過体重・肥満型が多い
- 中年以降が多いが、学童期の小児も増えている
- 過食・運動不足・ストレスなどまた遺伝的な異常によるものもある
- ゆっくり発症、無症状のことも多く、学校の検尿などで発見されることもある
- 食事療法と運動療法が基本
- 血糖降下薬やインスリン注射を併用する場合もある
<その他> - 思春期には成長ホルモンの影響などによる生理的インスリン抵抗性が増大し、思春期特有の精神的葛藤、また女子においては月経周期などがインスリン抵抗性増大に影響を与える
治療目標
- 非糖尿病児と同様の発育とQOLの確保
- HbA1c:Ⅰ型7.5%未満、Ⅱ型6.0%未満
妊娠糖尿病
分類
①糖尿病合併妊娠
→妊娠前から糖尿病が存在
②妊娠中に発見される糖代謝異常
→❶妊娠糖尿病(GDM)
⇒妊娠中に初めて発見または発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常
→❷明らかな糖尿病
⇒妊娠時に診断された明らかな糖尿病
妊娠中の糖代謝の変化
妊娠し、胎盤が形成されるとプロゲステロン・プロラクチン・胎盤性ラクトゲンなどが分泌され、妊娠が進むにつれて増加します。
プロゲステロン・プロラクチン・胎盤性ラクトゲンは、インスリン拮抗ホルモンといわれ、インスリン抵抗性が強まります。
糖代謝が正常な妊婦では膵β細胞の容積の増加やインスリン分泌反応の増加が起こり、妊娠中のインスリン抵抗性を対償できます。
しかし、糖尿病の家族歴、肥満などの要因でインスリン分泌がもともと少ないか、インスリン抵抗性が強い場合、妊娠に伴うインスリン抵抗性を対償することができず、血糖上昇を起こしてしまいます。
糖代謝異常妊娠の合併症
糖代謝異常妊娠の合併症を、母体・胎児・新生児に分けてまとめていきます。
母体の合併症
- 流産・早産
→腎症を合併した妊婦では、タンパク尿の増加や血圧の上昇により早産になります - 妊娠高血圧症候群
- 尿路感染症
- 羊水過多症
→羊水過多により、早期子宮収縮、前期破水、母体の呼吸障害、胎位異常または胎児死亡ならびに陣痛および分娩時の様々な問題のリスクが上昇します
胎児の合併症
- 先天奇形
→胎児が高血糖に曝される時期、期間に応じて、器官発生、神経・内分泌系の発達、身体発育などに影響を及ぼします。奇形が生じやすい臨界期(妊娠3-10周)に血糖コントロール不良であると奇形の頻度が高くなります。 - 過剰発育・巨大児
→母体の血中のブドウ糖は、胎盤を通過し胎児に運ばれます。しかし、母体のインスリンは胎盤を通過しないため、母体の血糖値が上がると胎児に移行するブドウ糖も増加し、胎児の膵臓からインスリン分泌の増加が起こります。インスリンは成長因子であるため、過剰に分泌されると過剰発育をきたし、ひいては巨大児になってしまいます。 - 発育遅延
- 胎児仮死
- 子宮内胎児死亡
新生児の合併症
- 低血糖症
→分娩時まで母体の高血糖が続くと、胎児自身のインスリン分泌により、新生児に低血糖が起こります - 高ビリルビン血症
- 呼吸障害
- 低カルシウム血症
- 多血症
- 肥厚性心筋症
妊娠中の血糖管理目標値
- 空腹時血糖値:70-100mg/dL
- 食後2時間血糖値:<120mg/dL
- HbA1c:<6.2%
- グリコアルブミン:>15.8%
治療
食事療法
原則
①母体と胎児が健全に妊娠を維持するのに必要なエネルギーを供給する
②食後の高血糖を起こさない
③空腹時のケトン体産生を亢進させない
→妊娠後期になると胎児が成長し、母体はエネルギー不足から自らの脂肪を分解するためケトーシスに陥りやすくなります。母体は糖質を中心とした十分な栄養を摂取する必要がああります。また、脂質の異化を表す血中ヒドロキシ酪酸が上昇すると出生児の2歳時のIQが逆相関すると報告されています。
妊娠中の推奨体重増加量については、以下の通りです。
BMI<18.5 9-12kg
18.5≦BMI<25.0 7-12kg
25≦BMI 個別対応(おおよそ5kg)
運動療法
運動療法は、妊娠中の腰痛、頭痛、倦怠感、浮腫、静脈瘤の減少や帝王切開率低下、分娩所要時間の短縮効果があります。
運動療法ができない場合(切迫流産・早産、重症の網膜症・腎症・高血圧症、Ⅰ型糖尿病、重度の貧血、整形外科的な問題など)もあるため、メディカルチェックを行っていきましょう。
薬物療法
インスリンは胎盤通過性が低く、比較的安全に使用することができます。(ヒューマログ、ノボラピッド、ヒューマリンR、ヒューマリンN、レべミル)
すでに経口血糖降下薬で治療しており、妊娠を希望している場合はインスリン療法に変更する必要があります。
妊娠後について
妊娠糖尿病を経験すると、将来、糖尿病や耐糖能異常を発症しやすくなります。
海外の研究では、いったん正常化しても、正常血糖の妊婦と比べ、7.4倍糖尿病になる危険があるとされています。
日本でも産後5年で約20%が糖尿病に移行しているとの研究あり、産後のフォローアップも重要となってきます。
高齢者の糖尿病
セルフケア能力が低下する高齢者では、家族や介護者のサポートが必要となります。
独居やサポートを受けられない高齢者は、糖尿病の治療が困難となり、自立した生活を送ることが困難となります。
高齢者に多い要因
- 加齢に伴い、体脂肪率の増加から、インスリン抵抗性が亢進していることが多い
- 加齢に伴い、運動量の低下からインスリン抵抗性の増大する。運動量の低下が筋肉量の減少、基礎代謝の低下につながり、さらにはインスリン抵抗性が増大する。
- 生活様式の欧米化が加齢による膵β細胞の疲弊を助長し、インスリン初期分泌の遅延や低下を引き起こしている
高齢者特有の症状
- 自覚症状が出にくく、また異常があっても年のせいにして見過ごすことが多い
- 高齢者の低血糖の特徴として、自律神経症状(動悸、冷汗、手の震え)がみられない場合が多く、頭のくらくら感、ふらふら感、認知症様症状、せん妄、興奮状態などの非典型的な症状で発見されることがある
治療
食事療法
糖尿病を診断されたら、1-2ヵ月の食事・運動療法を行い、血糖コントロールができなければ薬物療法の適応となります。
高齢者の食事は、蛋白質が減少して糖質が増加する・味覚が低下し塩分過剰になる・歯が少なく、咀嚼能力低下のためにかたい野菜などが食べにくくなる・従来からの嗜好が変えにくい傾向があります。
サルコペニアの防止のため、腎機能に注意しながら適度なたんぱく質の摂取も重要となります。
運動療法
高齢者の運動療法の注意点として、
①合併症の程度に応じて運動強度を調節する必要がある
②脱水をきたしやすい
③低血糖症状が顕著ではない
④運動能力に個人差が大きい
などがあります
薬物療法
高齢者は、薬剤の代謝・排泄が緩徐であることから、投与を少量から開始し、有効であれば副作用の評価をしながら増量していく必要があります。
認知機能が服薬コンプライアンスに影響を与えるため、食前・食後の薬剤が混在しないよう、できるだけ少ない服薬回数で済ませる処方が望ましいです。
これは、インスリンにおいても同様です。
次に、高齢者への投与における長所と短所について薬剤ごとにまとめていきます。
ヒグアナイド薬
(メトグルコ、メトホルミンなど)
長所)大血管障害の1次予防
短所)乳酸アシドーシス、服薬回数
チアゾリジン薬
(アクトス、ピオグリタゾンなど)
長所)大血管障害の2次予防、抗動脈硬化
短所)骨折リスクの上昇
スルホニル尿素薬
(オイグルコン、グリベンクラミド、グリミクロン、グリクラジド、アマリール、グリメピリドなど)
短所)低血糖の可能性、膵β細胞の疲弊
即効型インスリン分泌促進薬
(シュアポスト、レパグリニド、グルファスト、ミチグリニド、ファスティック)
短所)低血糖の可能性、服薬回数
DPP-4阻害薬
(グラクティブ、ジャヌビア、エクア、オングリザ、ネシーナ、トラゼンタ、テネリア、スイニーなど)
長所)副作用が少ない、安定した血糖降下作用
αグルコシダーゼ阻害薬・α-GI
(アカルボース、セイブル、ミグリトール、ベイスン、ボグリボースなど)
長所)大血管障害の1次予防、糖尿病発症予防
短所)服薬回数、腸閉塞の可能性
SGLT2阻害薬
(フォシーガ、カナグル、ジャディアンス、スーグラ、ルセフィ、デベルザなど)
短所)脱水、筋肉量低下(サルコペニア)
実際に、独居の高齢者の患者さんで、認知機能低下により、血糖管理が行えなくなり、入院するパターンは多いです。
食前インスリンの単位数を同じにする、訪問看護サービスを利用して電話にて血糖確認とインスリン単位数を確認するなどの治療の工夫やサポートが必要となります。
高齢者の血糖コントロール目標
認知機能や身体所見が正常で健康な高齢者
→HbA1c 7.5%未満、空腹時血糖あるいは食前血糖値 90-130mg/dL、眠前血糖値 90-150mg/dL
複数の併発疾患または軽度から中程度の認知機能低下または日常生活関連動作の低下がある患者
→HbA1c 8.9%未満、空腹時血糖あるいは食前血糖値 90-150mg/dL、眠前血糖値 100-180mg/dL
長期療養の介護施設の入所者、末期慢性疾患、中等度から重症の認知症もしくは要介護状態である患者
→HbA1c 8.5%未満、空腹時血糖あるいは食前血糖値 100-180mg/dL、眠前血糖値 110-200mg/dL
最後に
今回は、小児・妊娠期・高齢者の糖尿病の病態についてまとめました。
特に高齢者の血糖管理は、認知機能だけでなく巧緻動作が難しいなどで血糖測定・インスリン手技を獲得できないこともあります。
患者さんの家族は日中在宅なのか、仕事をしているのか、サポートは可能なのかなどの情報収集も大事になってきます。
今までずっと血糖管理をしてきた患者さんが、認知機能低下により家族のサポートが必要になったときに、
「今まで一人でやってきたんだから、手助けはいらない。」
「家族に手伝ってもらうのは申し訳ない。」
などという思いを抱えていることもありますので、単にサポートできるよう指導するだけでなく、
患者さんがサポートを受けることについての思いの聴取も大事になります。
久々の更新はいかがだったでしょうか?
次回も、糖尿病の特殊な病態についてパート2を記事にしていきます。
コロナがまた流行り出してきたので、みなさん体調管理にはお気をつけください!
それでは、次の記事でお会いしましょう!
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