この記事を読むとわかること
- 糖尿病の病態と種類がわかります
- 糖尿病の症状がわかります
糖尿病の病態としては、血糖値が高いという単純なものではなく、種類や成因が複雑です。
私も、改めて学び直しながら、記事にしていきたいと思います!
糖尿病は4種類ある
糖尿病はⅠ型/Ⅱ型/妊娠糖尿病/その他の4種類があります。
それぞれの種類についておさらいしていきましょう。
Ⅰ型糖尿病
膵臓のランゲルハンス島のB(β)細胞の破壊され、インスリン欠乏によって起こります。
Ⅰ型も要因で分類すると2種類(自己免疫性Ⅰ型糖尿病・特発性Ⅰ型糖尿病)、発症スピードで分類すると3種類(急性発症Ⅰ型糖尿病・緩徐進行Ⅰ型糖尿病・劇症Ⅰ型糖尿病)あります。
自己免疫性Ⅰ型糖尿病(ⅠA型糖尿病)
自己免疫反応やウイルス感染により、B(β)細胞を自分で攻撃してしまい、インスリン分泌機能を破壊します。
遺伝的素因を基盤として、ウイルス感染などをきっかけに自己抗体が出現し、自己免疫反応から膵臓のランゲルハンス島炎を生じ、B(β)細胞が破壊されることで発症します。
自己抗体の多くは糖尿病発症前から陽性となるため、Ⅰ型糖尿病の発症予知マーカーとして使われます。
特発性Ⅰ型糖尿病(ⅠB型糖尿病)
自己抗体は関係せず、原因不明で起こるⅠ型の糖尿病です。
急性発症Ⅰ型糖尿病
最も頻度の高い典型的で、糖尿病の症状が出はじめてから数ヶ月でインスリン依存状態になるタイプです。
若年の発症が多いですが、中高年が発症することもあります。
緩徐進行Ⅰ型糖尿病
B(β)細胞は破壊が緩徐に進行するため、診断時すぐにはインスリン治療を必要としないタイプです。
しかし、膵臓に負担をかけるような内服薬は推奨されず、インスリン治療などで膵臓を保護する治療を開始することが望ましいといわれています。
劇症Ⅰ型糖尿病
急激にB(β)細胞が破壊され、診断時にはほとんどB(β)細胞が存在せず、1週間前後でインスリン依存状態になるタイプです。
緩徐進行Ⅰ型糖尿病は、膵臓に負担をかけるような内服薬は推奨されません。
インスリン治療などで膵臓を保護する治療を開始することが望ましいといわれているため、結局はⅠ型糖尿病はインスリン依存状態となります。
インスリン依存状態とは、身体がインスリンを分泌できないため、インスリン注射で補う状態のことです。
Ⅱ型糖尿病
Ⅱ型糖尿病の発症には遺伝因子・環境因子により発症します。
よくあるⅡ型糖尿病の病態について、詳しく見ていきましょう。
発症機序として、①インスリン分泌の低下、②インスリン抵抗性の2種類に分けられる
<インスリン分泌の低下>
B(β)細胞からのインスリン分泌が減少した状態であり、遺伝的要因と関連が強いです。
糖尿病発症以前からインスリン分泌機能は低下しており、診断時には正常の半分程度まで低下しています。
<インスリン抵抗性>
インスリン分泌機能は保たれているものの、インスリンの効きが悪く、肝臓・骨格筋・脂肪にブドウ糖を取り込みにくい状態です。
環境要因との関連が強いとされています。
インスリン分泌低下やインスリン抵抗性をきたす遺伝因子に環境因子が加わることにより、インスリンの作用不足を生じて発症します。
単一遺伝子ではなく、複数の遺伝子の組み合わせによって発症リスクが高まる多因子遺伝病となります。
遺伝因子により、インスリン分泌機能は欧米人>アジア人であり、アジア人は糖尿病を発症しやすいのです。
糖尿病にかかわる環境因子について
糖尿病にかかわる環境因子については、肥満・運動不足・高脂肪食・子宮内環境があります。
それぞれを解説していきます。
肥満
脂肪細胞からはアディポサイトカインという蛋白質が分泌されます。
アディポサイトカインには善玉・悪玉の2種類が存在します。
善玉にはアディポネクチン・レプチンなどがあり、以下のような作用があります。
アディポネクチン:血糖↓、中性脂肪↓、抗動脈硬化
レプチン:食欲減退、エネルギー消費↑、抗インスリン抵抗性
どちらも脂肪細胞が肥大化すると分泌が減少してしまいます。
悪玉にはTNF-α、PAIー1などがあり、以下のような作用があります。
TNFーα:インスリンの働きを障害する
PAI-1:心筋梗塞などの血栓を起こしやくする
どちらも脂肪細胞が肥大すると分泌量が増えてしまいます。
運動不足
運動はブドウ糖や脂肪の利用促進による血糖低下の急性効果があります。
また、骨格筋の収縮から、AMPKの活性化によるインスリン抵抗性の改善や肥満改善効果もあります。
AMPKは細胞のエネルギーセンサーの役割があります。
エネルギーの減少をAMPKが感知し、ATP産生の促進と消費の抑制が起きます。
ATPのレベルを回復させる=糖・脂肪・蛋白質の合成は抑制され、ATPが産生されます。
メトホルミンはAMPKを標的としているお薬になります。
高脂肪食
現代の食事内容は、お肉や乳製品などの動物性脂肪摂取が増加しています。
動物性脂肪の摂取は、レプチンの分泌が低下し、満腹感が得られなくなるというデメリットがあります。
さらに、動物性脂肪は脳内に炎症を引き起こし、脂肪を食べても満足できない依存状態をつくり、認知症発症リスクが高くなります。
ケーキやアイスなどの美味しいものに限って、このようなデメリットがあるのは腹立たしいですね。
もちろん全く食べるなということではありません。
適度な量を摂取しましょう・・・と言われても歯止めが効かないんですよね~
子宮内環境
胎児期の母体の低栄養と低出生体重児が糖尿病の危険因子となるという研究結果があります。
胎児期に母体の栄養不足があると、胎児は少ない栄養でもたっぷり体に貯めこもうとします。
出生後、栄養をためやすくなっている赤ちゃんは、栄養をとりすぎることで、肥満や糖尿病、生活習慣病の発症リスクを上昇させてしまうのです。
妊娠糖尿病(GDM)
妊娠中に初めて発見または発症した、糖尿病に至っていない糖代謝異常を妊娠糖尿病といいます。
プロゲステロン、プロラクチン、胎盤性ラクトゲンなどのホルモンが妊娠に伴い分泌され、
これらのホルモンはインスリン拮抗ホルモンであり、インスリン抵抗性を強めてしまいます。
正常な妊婦であれば、膵B(β)細胞の容積の増加やインスリン分泌増加が起こり、代償できます。
しかし、糖尿病の家族歴や肥満などの要因で代償しきれず、血糖上昇を起こしてしまいます。
その他
①遺伝子異常
②膵外分泌疾患
膵炎、外傷、膵摘、腫瘍、ヘモクロマトーシスなど
③内分泌疾患
クッシング症候群、先端巨大症、褐色細胞腫、グルカゴノーマ、アルドステロン症、甲状腺機能亢進症、ソマトスタチノーマなど
④肝疾患
慢性肝炎、肝硬変など
⑤薬剤や化学物質によるもの
グルココルチロイド(ステロイドホルモン)、インターフェロンなど
⑥感染症
先天性風疹、サイトメガロウイルスなど
⑦免疫機序によるまれな病態
インスリン受容体抗体、スティッフマン症候群、インスリン自己免疫症候群など
⑧その他の遺伝的症候群で糖尿病を併発することが多い疾患
ダウン症候群、プラダー・ウィリ症候群、ターナー症候群、クラインフェルター症候群、ウェルナー症候群、ウォルフラム症候群、セルロプラスミン低下症、脂肪萎縮性糖尿病、筋強直性ジストロフィー、フリードライヒ失調症、ローレンス・ムーン・ビードル症候群
糖尿病の症状
代表的な糖尿病の症状について説明していきます。
多尿
血中に余分なブドウ糖があると、血糖値を下げようと、尿中に排泄する機構が働きます。
ブドウ糖は浸透圧物質であり、水分を血管内に引っ張る作用が働き、血管内の水分が増え、尿量も増えて、多尿となります。
この作用は浸透圧利尿といいます。
ブドウ糖を尿中に排泄するには、多くの水分が必要となってしまうのです。
口喝・多飲
多尿により、体内は脱水状態になり、視床下部が刺激され、口喝が生じます。
口喝を代償するために多飲となります。
倦怠感・脱力感・易疲労感・空腹感
インスリンの作用不足により、血中のブドウ糖が増え、細胞内でのブドウ糖が不足します。
細胞内のブドウ糖が不足し、エネルギー不足になると細胞で構成される筋肉などが十分に活動できないため、倦怠感・脱力感・易疲労感を生じます。
また、細胞は飢餓状態となるため、空腹感も生じます。
体重減少
細胞のエネルギー不足が持続すると、筋肉や脂肪は自分自身のたんぱく質を分解してエネルギー源とするため、体重減少を起こします。
脂肪は酸化されてケトン体となり、血中ケトン体が上昇します。
重症であれば、意識障害を生じてしまう糖尿病ケトアシドーシスを引き起こすこともあります。
糖尿病の合併症による症状については次の記事にて説明しようと思います。
ラウンド時に口喝・倦怠感・しびれ(しびれは合併症症状)の3点は必ず聞きます。
また、口喝症状があれば、一日のだいたいの飲水量についても追加で確認しましょう。
最後に
糖尿病にはおおまかに4種類あり、成因にも違いがあります。
環境因子にも大きくかかわりますので、患者さんの生活背景についての聴取も大事になってきます。
今回は糖尿病による症状を少しだけお話ししましたが、合併症がある患者さんには、神経症状や皮膚などの観察項目が増えてきます。
患者さんの糖尿病の状態に合わせた観察を心がけましょう。
糖尿病の2回目の記事で糖尿病のだいたいの病態はつかめましたでしょうか?
次回は合併症について記事にしていきたいと思います。
それでは、次の記事でお会いしましょう!
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