この記事を読むとわかること
- 便秘のアセスメント方法がわかります
- 便秘に対する薬剤について知識を深めることができます
たいていの看護師が対峙することになる便秘ですが、あらためて知識をおさらいして、良い排便ケアを提供していきましょう
便秘とはすっきり排便がないこと
慢性便秘症診療ガイドラインより、「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」という定義をされています。
何日間出なかったら便秘という定義はなく、毎日出ていても残便感があったり、3日に1回でもすっきり排便できる人もいるかと思います。
そのため、便秘の日数にこだわらず、便秘とはすっきり排便がないことだと言えます。
人は食事を摂取してから排便に至るまで、1~3日間かかると言われています。よく臨床で下剤を使うタイミングが排便-3日目であるのは、人の身体の消化時間が関係していますね。
便秘のタイプは弛緩性便秘と直腸性便秘がある
便秘には2種類あります。種類によって、対応が変わってくるため、
便秘の種類をおさらいしておきましょう!
弛緩性便秘
大腸機能の低下により蠕動運動が低下していることにより起こる便秘です
便が長時間滞留することで便の水分も奪われ、便が硬くなることでさらに便を排出しにくくなります
原因:水分不足、食物繊維不足、運動不足などがあります
対応:食生活の見直し、骨盤底筋の運動、腹部マッサージ、腰腹部の温罨法などで腸管の動きを促す
直腸性便秘
本来は直腸まで便が到達すると、排便反射が誘発されて便意を催します。
しかし、排便反射が弱いことで、便意が弱いために起こる便秘です。
原因:高齢者や寝たきり状態にある人、よく便意を習慣的に我慢してしまう人に多いです
対応:座薬・浣腸・敵便によって便を取り除く、水分摂取量や食事内容を見直す
直腸性便秘であれば、直腸に便自体はあるため、下剤というよりは、敵便や座薬、浣腸にて排出できる可能性があります。直腸に便が滞留していないか確認し、便秘の種類もアセスメントしていきましょう。
正常な便性状はブリストルスケール(BSS)の3~5程度
便性状はよく使われるブリストル便性状スケールを用います。
BSSの3~5程度が正常な便性状とされており、理想は4とされています。
理想の便性状を目指して、水分・下剤の調整をしていく必要があります。
量に関しては、患者さんそれぞれの食事量にもよるかと思いますが、バナナ大程度が理想とされています。
私はく使う便量の表現としては、バナナ1本、片手大、両手大、鶏卵、付着などがあります。
もし、その他にも表現方法があればコメントで教えていただけると助かります!
便性状とともに、便量もしっかり観察して記録できると、次の勤務帯のスタッフに情報共有ができ、便処置をどうするかを考えやすくなります。ぜひ、排便回数だけでなく、便性状・便量も記録または排泄表に記載していきましょう。
また、便秘の定義は「快適に排出できない」という部分があり、患者さんの残便感や腹部膨満感の改善程度も加えて書けるとなおよいですね。
下剤には刺激性下剤・浸透圧性下剤・上皮機能変容薬・胆汁酸トランスポーター阻害薬・漢方薬に分類される
ここから下剤の知識となります。
新薬もあり、たくさんある下剤で大変ですが、少しずつ理解を深めていきましょう。
刺激性下剤
刺激性下剤は腸粘膜などを刺激して蠕動運動を亢進させ、排便を促す作用があります。
長期連用により耐性(弛緩性便秘に移行する)ができ、逆に便秘になることがあるため、頓用・短期間の投与が推奨されています
主に、刺激性下剤には、ピコスルファートナトリウム水和物(ラキソベロン)・センノシド(アローゼン・プルゼニド)があります。
ピコスルファートナトリウム水和物(ラキソベロン)
作用:腸内細菌により加水分解され、活性型のジフェノール体を生じ、
このジフェノール体が大腸粘膜を刺激し、
①蠕動運動を亢進させる
②共に水分吸収を阻害する
ことにより、排便を促します
作用時間:7~12時間
注意点
- 液体は適量の水に溶かして飲む
センノシド(アローゼン・プルゼニド)
作用:センノシドは、腸内細菌の作用によりレインアンスロンを生成することにより、大腸の蠕動運動を亢進させ、排便を促します
作用時間:8~10時間
注意点
- センノシドは薬剤耐性がつきやすいデメリットがあります
- 錠剤であり、ピコスルファートと比べて量の微調整はできません
(センノシド12mg1錠=ピコスルファート6滴)
ピコスルファートは、錠剤ではなく液体のため、内服翌日も排便がなければ、増量の微調節がしやすいところがいいですよね~また、センノシドと比べて耐性が生じにくいというところも素晴らしいです!
ただ、ピコスルファートは使い切らずに余らせることもあるため、慢性的な便秘でなければセンノシドのほうが使い切りやすさがあると思います
浸透圧性下剤
浸透圧性下剤は、腸内の浸透圧を高め、腸内へ水分を引き寄せ、便を柔らかくします。
また、便のかさが増すことで、腸を刺激して蠕動運動を促す効果もあります。
浸透圧性下剤は塩類下剤・糖類下剤・高分子化合物に分類されます。
塩類下剤:酸化マグネシウム
作用:胃酸により塩化マグネシウムとなり、腸内で重炭酸塩となり浸透圧を高めます
作用時間:2~3時間
注意点
- 胃酸で作用するため、制酸薬を服用している・胃切除後の患者さんには効果が減弱します
- 体の中の水分が腸に吸収されてしまうため、脱水に注意が必要
- 高マグネシウム血症を起こすリスクがあります
↪腎機能が低下している患者、骨粗鬆症に対して活性型ビタミンD3(アルファカルシドール、エディロール等)を内服している患者には特に注意が必要 - テトラサイクリン(ミノマイシン、ミノサイクリン等)やニューキノロン(レボフロキサシン、クラビット等)などの抗菌薬の効果を弱めることがあり、同時内服は避け、1~2時間の間隔を空けて内服します
非常に使われている下剤ですが、注意点も多いため、使用している患者さんにあてはまっていないか、確認しておきましょう!
カマ、マグなどと呼ばれることが多いですよね。
糖類下剤:ラグノスNF経口ゼリー(ラクツロース)
作用:
①浸透圧作用により、腸内の水分量を増やして、便を柔らかくします
②ラクツロースは腸内細菌により分解され、乳酸などが生成され、蠕動運動を亢進させる作用があります
③生成した乳酸などにより腸内のpHが低下し、アンモニア生成と腸管吸収を抑制し、血中アンモニア濃度を低下させます(高アンモニア血症の患者に使用されることがある)
注意点
- ラクツロースが乳酸などを生成するということは、発酵を促すため、ガスを発生させ、腹部膨満感を起こしやすいため、ガスが多いタイプの便秘には注意が必要です
- ガラクトース血症の患者は、ガラクトースが体内に蓄積してしまうため、服用できません
高分子化合物 モビコール(ポリエチレングリコール)
浸透圧を利用しますが、他の薬剤と違って、腸内から水分を引っ張るのではありません。
①決まった水の量で溶かして内服し、ポリエチレングリコールに水をひきつけたまま、
腸まで移動し、便に水分を保持させます
②便の水分量が増え、便の容積が増大することで、蠕動運動を促します
③ポリエチレングリコールは保湿効果のある化粧品などに使われており、便に対してもすべりの効果があり、スムーズな排便が期待されます
作用時間:服用してから効果発現までの時間の2.0日(中央値)
注意点
- 体内の水分を奪うことはありませんが、溶かした水は体内に吸収されません。水分摂取をしているようにみえてしまいますが、吸収されないため、脱水に注意。
- モビコールLDは水60ml、HDは120mlに溶かして内服します
(HDはLDの2倍量の製品) - 塩味、苦味があるため、甘い飲料水やお茶、牛乳、コーヒー、お吸い物、味噌汁、コーンスープに混ぜると飲みやすくなります
上皮機能変容薬
上皮機能変容薬は、小腸粘膜上皮などに作用します。
種類によって作用機序と作用に違いがありますが、
腸管の水分分泌を増やして便を柔らかくしたり、蠕動運動を促進することにより、排便を促します。
上皮機能変容薬にはアミティーザ・リンゼスがあります。
アミティーザ
作用:小腸に作用して、水分の分泌を増やし、便を柔らかくする作用があります
作用時間:初回投与後24時間以内に半数以上が自然排便あり
注意点
- 副作用として嘔気があり、時間経過とともに軽減します。空腹時の内服は避けることや、内服初期は少量から開始する、制吐薬を併用して内服を継続するなどの工夫が必要です
リンゼス
作用:
①腸の内容物に水分を与えることで便を柔らかくし、便の移動をスムーズにする作用があります
②大腸の痛みに過敏になっている神経線維の伝達を抑制するため、腹痛が起こりにくい作用があります
作用時間:7割が24時間以内に排便あり
注意点
- 下痢を起こしやすいため、必ず食前に内服します
胆汁酸トランスポーター阻害薬
グーフィス
胆汁酸には、①大腸の水分分泌を促す、②腸粘膜に作用し、蠕動運動を促進する
という2つの作用がある
作用:グーフィスは、胆汁酸の再吸収を抑制し、大腸内の胆汁酸の量を増やすことで、胆汁酸の作用を利用することで排便を促します
作用時間:初回の自発排便の発現時間は5.2時間(中央値)
注意点
- 食事の刺激により、胆汁酸が腸に放出される前に投与し、胆汁酸の再吸収を抑制する必要があるため、必ず食前に内服します
漢方薬
漢方薬にはいろいろありますが、ここでは大黄甘草湯と大建中湯について紹介していきます。
大黄甘草湯ダイオウカンゾウトウ
作用:大黄は蠕動運動促し、甘草は下痢による腹痛を和らげる効果があります
作用時間:8~10時間
注意点
- 大黄は刺激性下剤に分類されるため、長期的な使用は弛緩性便秘に繋がるリスクがある
大建中湯ダイケンチュウトウ
作用:腸管血流を増やし、お腹を温め、胃腸の動きを活発にします
また、大黄は含まれていないため、長期的な使用が可能
作用時間:8~14時間
注意点
- 肝機能低下を起こすリスクがある
- 間質性肺炎を起こすリスクがある
便秘を起こしやすい薬
患者さんの投与されている薬が、便秘の原因となることがあります。
以下は一部ですが、患者さんの内服している薬にも着目してアセスメントしていきましょう。
最後に
下剤の分類を以下にまとめましたので、ご参考ください。
たくさんの下剤がありましたが、薬剤師さんからは、
新薬の上皮機能変容薬と胆汁酸トランスポーター阻害薬は、
酸化マグネシウムなどの既存の下剤が効かないときの最終兵器、
と聞きました。確かに、アミティーザとグーフィスはちらほら見かけるようになっています。
ぜひ、便秘のアセスメントに加えて、使用する薬についても知識を深めて、
正しい排便ケアを提供できるようにしていきましょう!
ちなみに、ものぐさ看護師は便秘に悩まされたことはありません笑
コーヒーにも蠕動運動を促す効果はあるとされていますが、
コーヒー大好き人間というのも快便に繋がっているのかもしれません。
それでは、次の記事でまたお会いしましょう!
ものぐさ看護師が最近はまっているコーヒーのお供の「塩黒糖」です!
あとは、勤務後に食べるとめちゃくちゃ美味しくなります笑
糖と塩分が足りていない疲れた体には、甘じょっぱさが一段と感じられる、
九州のおすすめお菓子です。
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