知識まとめ【薬剤】褥瘡に使用する外用剤

知識まとめ【薬剤】

この記事を読むとわかること

  • 外用剤の構成についてわかります
  • 外用剤の分類と機能についてわかります
  • 外用剤の選択方法についてわかります
  • 外用剤の留意点についてわかります

ものぐさ看護師
ものぐさ看護師

どの科であっても、褥瘡がある患者さんを受け持つことはあるかと思います。

その際に使用する外用薬は、創部の状態に適した外用薬であるかを考えながら処置できていますでしょうか?

しっかり外用薬の効能と選択方法の知識を深め、正しい褥瘡ケアを提供できるようにしていきましょう!

外用剤の構成

外用薬は、“主薬”“基剤” から成り立っています

【主薬】

主薬は、それ自体に薬効があります 

(抗生物質などが配合されています)

【基剤】

基剤は、薬効はありませんが、配合されている薬剤を保持して薬効を発揮させます

(軟膏、クリーム、ローションなど)

創治癒には湿潤環境が必要となります。

そのため、湿潤環境を作るための基剤も重要となりますので、

主薬の効果だけでなく、基剤は何なのかという知識も必要です。

基剤の分類

基剤は下記の図のように分類されます

【疎水性基剤】

  • 疎水性基剤は水分となじまず、保湿効果があります
  • 滲出液量が適正な創に対し使用します
  • 創傷治癒の最終段階で創の上皮化目的に用いられます

【乳剤性基剤・水中油型】

  • 乾燥した創面に水分を補給します
  • 滲出液量の少ない乾燥した創に対し使用します
  • 水分が過剰となって浸軟しないように注意が必要です

【乳剤性基剤・油中油型】

  • 含有する水分が少なく補水機能は弱く、疎水性基剤と同様に保湿効果があります
  • 滲出液量が適正な創に対し使用します

【水溶性基剤】

  • 水溶性基剤は滲出液を吸収する効果があります
  • 滲出液量の多い創に対し使用します
  • 滲出液が少なくなり、創が乾燥しないように注意が必要です

外用薬の基剤による分類

よく使われる外用薬を基剤ごとに分類した図は下記になります

創が乾燥しているのに、医師のオーダー通りに水溶性基剤を使い続けることは、

創傷治癒を妨げることになります。

滲出液量や創の湿潤・乾燥状態をアセスメントしながら、使用している外用薬が

適切であるかを判断していきましょう。

外用剤の分類と機能

主薬の機能には、

  • 感染の防御
  • 壊死の除去
  • 湿潤の調整(吸水・保湿・補水)
  • 肉芽形成促進
  • 上皮化促進


    に分類されます

それぞれの機能で外用薬を分類していきます

抗菌効果のある外用薬

【カデックス®軟膏0.9%】

主薬:カデキソマー・ヨウ素

効果:抗菌効果と壊死除去効果を併せ持ちます

【ヨードコート®軟膏0.9%】

主薬:ヨウ素

効果:抗菌効果と潰瘍治癒促進効果があります

【ユーパスタコーワ軟膏】

【イソジンシュガーパスタ】

主薬:ポピドンヨード・シュガー

効果:ポピドンヨードによる滅菌効果と白糖による創傷治癒効果があります

(白糖の効果)

①細菌の成長を阻害し、 黄色ブドウ球菌のバイオフィルム形成を抑制       

②白糖の吸水作用により創面の浮腫を軽減する、コラーゲン合成を促進して良好な肉芽を形成

【ゲーベン®クリーム1%】

主薬:スルファジアジン銀

効果:幅広い病原菌に有効。特に緑膿菌に強い抗菌効果があります

壊死組織の除去効果のある外用薬

【ブロメライン軟膏5万単位/g】

主薬:ブロメライン

効果:蛋白分解酵素

【カデックス®軟膏0.9%】

主薬:カデキソマー・ヨウ素

効果:抗菌効果と壊死除去効果を併せ持ちます

【ゲーベン®クリーム1%】

基剤:水中油型(O/W)乳剤性軟膏

効果:基剤の保水効果により壊死組織が融解します

ゲーベンは基剤が壊死組織除去効果があり、

硬くなってしまっている壊死組織を柔らかくして除去していくイメージです。

肉芽形成・上皮化促進効果のある外用薬

【アクトシン®軟膏3%】

主薬:ブクラデシンナトリウム

効果:肉芽形成と上皮化促進効果があります

注意点:冷所で保管し、常温で30分ほど置いてから使用すると塗布しやすくなります

【プロスタンディン®軟膏0.003%】

主薬:アルプロスタジルアルファデクス

効果:肉芽形成と上皮化促進効果があります

【オルセノン®軟膏0.25%】

主薬:トレチノイントコフェリル

効果:肉芽形成促進効果があります

【リフラップ®軟膏5%】

主薬:リゾチーム塩酸塩

効果:肉芽形成と上皮化促進効果があります

【ソルコセリル®軟膏5%】

主薬:幼牛血液抽出物

効果:肉芽形成促進効果があります

【フィブラスト®スプレー250/スプレー500】

主薬:トラフェルミン

効果:肉芽形成促進効果があります

注意点:冷所で保管し、使用期限は使用開始から2週間です

フィブラストスプレーは基剤がスプレーであり、

単独では湿潤環境の維持ができないため、

さらに別の軟膏薬の併用が必要とします

その他の外用薬

【亜鉛華軟膏】

主薬:酸化亜鉛

効果:抗炎症作用効果があります(むしろ基剤の保護効果が重要)

【アズノール®軟膏0.033%】

主薬:ジメチルイソプロピルアズレン

効果:抗炎症作用効果があります(むしろ基剤の保護効果が重要)

亜鉛華軟膏は2mmの厚さで塗らないと意味がありません。

そして、塗布する前にはしっかり軟膏を落とすようにしてください。

落とす方法としては、サニーナまたはオリーブ油を使ってこすらないように落とします。

(経験上、サニーナは落としにくく、オリーブ油を医師に処方してもらうのがベストです)

外用剤の選択方法

外用薬を選択するためには、

創面環境調整(WBP)という考え方の治療があります。

これは、深い褥瘡などで治りにくい創傷を治療に反応する創傷に変えていく

という考え方であり、4つの排除すべき項目があります。

①T 壊死組織・活性のない組織

②I 感染または炎症

③M 湿潤の不均衡

④E 創辺縁の表皮伸展不良および表皮の巻き込み

この4つの優先順位は①➡②➡③➡④の順となっています

優先度の高い排除すべき項目に対して外用薬の機能を選択します

例えば壊死組織と感染がある創ではまず、TIMEのTが最優先とされるため、

壊死組織を除去する外用薬を使用します。

壊死組織が除去されれば、次はTIMEのIを改善するため、抗菌効果のある外用薬を使用していきます。

このように、創の状態に応じて外用薬を選択していく必要があるのです。

外用剤の留意点

  • 創の状態を無視して外用薬を継続使用しない

    ➡滲出液量が少ないのに吸水効果のある外用薬を使い続ける、滲出液が多いのに気保湿・補水効果のある外用薬を使い続けることは、適切な創環境が保てず、創傷治癒の妨げとなる

  • 創の状態に対し必要なTIMEの排除項目を見極め、外用薬の変更のタイミングを間違えない

    ➡肉芽形成ができてきていても、まだ壊死組織が残っている状態なのに、外用薬を抗菌効果のある外用薬に変更してしまうことで、壊死組織が増えたり、残っている壊死組織から感染が誘発されるなどの、創傷治癒の妨げとなる

  • 外用薬による接触性皮膚炎に注意する

    ➡ヨードアレルギーなどがある患者さんに、カデックス軟膏などのヨードを含む外用薬で発赤や潰瘍を起こすことがあるため、感染徴候と区別して観察する必要があります

  • 軟膏の塗布量が少ないと十分な効果は得られない

    ➡ゲーベンは特に塗布量が少ないと、自己融解ができても、すぐに乾燥して硬い壊死組織に戻ってしまう場合があるため、たっぷりと塗る

    ★塗布量の目安
    1FTU(finger tip unit)という単位で、外用薬の塗る量を表現することがあります。1FTUは、人差し指の先端から第一関節までチューブから絞り出した量で、両方の手のひらに塗る量に相当するという塗り方です。
    ※外用薬によっては塗りすぎが禁物のものもありますので、全外用薬を対象としていません

  • ポケット内に軟膏が残存することによる感染に注意する

    ➡ポケット内にはたっぷりと外用薬を塗布する必要がありますが、しっかり洗浄せず、古い残存している軟膏が感染を起こすリスクがある

  • 外用薬の色素沈着が生じないように注意する

    ➡カデックス軟膏、ヨードコート軟膏、ユーパスタコーワ軟膏、イソジンシュガーパスタなどの外用薬は、ヨウ素を含んでおり、正常な皮膚に付着すると外用薬の色素が沈着してしまうことがあります。創周囲を保湿剤などで保護してから、ヨウ素系外用薬を塗布するなどして、色素沈着を予防していきます。

最後に

外用薬の使用には、外用薬自体の効果を、現在の創の状態に適しているかをアセスメントする必要があります。

創の状態を無視して、医師のオーダー通りの外用薬を使い続けるのではなく、

医師にも創の状態を見てもらい、外用薬の変更を提案できるようにしていきましょう!

外用薬の効果と選択方法、留意点について理解できましたでしょうか?

あとは、残り少ない軟膏であれば、すぐに処方を依頼しましょう!

軟膏の残がなくて、十分な量が塗布できないのは、患者さんにも弊害が出ますし、次の勤務者への思いやりに欠けます・・・つい最近もありました・・・

是非、参考にした参考書も下にリンクを貼ったので、ぜひチェックしてみてくださいね~

ではまた次の記事でお会いしましょう!

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